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宮田珠己・旅コラム「魔境、豊後高田を歩く」最終回

旬情報 日付:2016年12月15日

石仏と神秘の仙境歩き ~中山仙境

くいちろう様 くいちろう様

そうして最後に案内いただいたのは真玉温泉よりもさらに奥、夷谷と呼ばれる一帯である。中山仙境と呼ばれる岩峰群をまわりこむように歩く。


中山仙境という名前を聞き、私の確信はもはや揺ぎないものに変わった。国東半島には仙境があるのである。魔境まであと一歩ではないか。


 というか歩いてみたらこの仙境が魔境そのものだった。


なぜこんな場所に? と首をかしげたくなるほどの夥しい石像の数々。そんななかから変わった像を探すだけでも面白そうだったが、なかには近づくと祟りがあると言い伝えられる「くいいちろう様」なる石像や、中に入った人が出てこなかったという真っ二つにわれた「兄弟割石」なんてのがあったりして、いやもう十分ですと言いたくなるぐらいの魔境っぷり。
 

兄弟割石 兄弟割石

さらにいっぱい歩いた先にあった明神さまの「釣鐘岩」は、近所で火事があった際にジャンジャンと鳴って知らせたとか。途中で見た庚申塔にはなぜかカニの浮き彫りがあったりして、こんなのは全国的にも珍しいのではないかと思う。


小さなところに目を配りながら歩くと面白いものが見つかるのは散歩の常識だけれども、その見つかる頻度が高い。もしひとりで歩いていたら、途中で目うつりしすぎて全然前に進めなかったかもしれない。
 

西夷を登っていく 西夷を登っていく

最後に案内してもらった自称『かくれ場案内人』さんおすすめの絶景スポット石河内の展望所から中山仙境を眺めると、そこには大陸の奥地でしか見られないようなボコボコした岩山が夕日に赤く照り映えていて、はっとした。いったいここはどこなのか、あのボコボコ山にはひとつ目の巨人が住んでいると言われても信じそうなぐらいであった。


なんでも中山仙境には、修験者が修行の際にわたる無明橋という石造りの橋が絶壁にかかっているのだそうである。短い橋だが高所恐怖症の人には到底渡れないとのことで、むしろ高いところが好きな私はチャレンジしてみたくなった。


ともあれ秘密めいた場所がそこらじゅうにあって、いまだ全貌が把握できない国東半島の奥深さに、私はますます惹きつけられていったのである。
 

釣鐘岩のある明神さま 釣鐘岩のある明神さま

こうして2日にわたり4ヶ所の魔境、じゃなかったおすすめコースを案内してもらったわけだが、やはり国東半島は怪しかった。


全国的に見ても一風変わった場所であることは間違いない。


ふと、どこかに似た場所があった気がして、思い出してみればインドネシアのバリ島だ。火山によってできた大地が浸蝕によって幾筋もの谷に別れ、その谷ごとに集落が発達して独自の文化を育み、同時に山岳信仰が発達して、結果そこらじゅうに魔物的な遺物が残されている。風景はまるで違うけれど、どちらも魔境の条件を満たしている土地なのだ(そんな条件があるとして)。


そもそも、この半島に石造りの仁王像が何百体も集中して立っているというだけでもう十分に怪しい。その時点で、尋常でない場所だと気づかなければいけない。


うすうす感づいていた私は、実に先見の明があった。

 

台座にカニが彫られている庚申塔 台座にカニが彫られている庚申塔

大分県の観光地といえば別府や湯布院といった温泉ばかりが有名で、豊後高田といっても私のまわりでは名前も知らない人がいたりする。


これだけユニークで濃厚な土地柄にもかかわらず知名度が低いのは、なんだかバランスの悪いことのように思えるが、そんな知る人ぞ知る感じが似合うのもまた国東半島らしい。


おそらくまだ私の知らないスポットがたくさん隠れていると思うので、これからもたびたび通って、じわじわとこの魔境を攻略していこうと考えている。



おわり

コース④「夷地域における隠れた石像と神社仏閣巡り」

「夷地域における隠れた石像と神社仏閣巡り」マップ 「夷地域における隠れた石像と神社仏閣巡り」マップ

著者:宮田珠己(みやた・たまき)氏プロフィール

兵庫県出身のエッセイスト。主な著書に「だいたい四国八十八ケ所」「晴れた日は巨大仏を見に」「いい感じの石ころを拾いに」「日本全国津々うりゃうりゃシリーズ」「ジェットコースターにもほどがある」などがある。

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